この記事では、「術後看護」を、なぜその看護が必要なのか(病態)とセットで解説します。「何をするか」だけじゃなく「なぜするか」を理解すると、臨床でのアセスメントが断然ラクになりますよ!
術後看護の目的
術後看護の目的は、「合併症を早期発見・予防し、患者さんの回復を最大限に支援すること」です。手術後の患者さんの体は非常に不安定な状態にあります。なにが起きているのかを理解した上で観察することが大切です。
手術・麻酔後の体で何が起きているの?
全身麻酔・手術による生体への主な影響を押さえておきましょう。
【侵襲(手術ストレス)による反応】
手術 → 組織損傷 → ストレス反応
↓
・炎症性サイトカイン放出(発熱・疼痛)
・カテコールアミン分泌増加(頻脈・血圧上昇)
・コルチゾール上昇(血糖上昇・免疫低下)
・水・電解質の再分布(サードスペースへの移行)
このため術後は血圧変動・発熱・血糖上昇・尿量変化などが起こりやすく、「正常な反応」と「異常のサイン」を見分ける目が必要です。
① 術後の基本観察(ABCDE アプローチで考えよう)
術後に最初に行う観察は「今すぐ命に関わることはないか」を確認することです。
| A (Airway) | 気道の開通確認 | いびき様呼吸・喘鳴・舌根沈下がないか |
|---|---|---|
| B (Breathing) | 呼吸状態 | 呼吸数・SpO2・呼吸音・胸郭の動き |
| C (Circulation) | 循環動態 | 血圧・脈拍・皮膚色・CRT・尿量 |
| D (Disability) | 意識レベル | 覚醒状態・呼びかけへの反応・JCS/GCS |
| E (Exposure) | 体表の確認 | 創部・ドレーン・出血・体温 |
② 術後の主な合併症と看護
▶ 術後出血
病態:
手術操作による血管損傷・吻合部出血・腹腔内出血が起こることがあります。出血量が多い場合は循環血液量減少性ショックに至ります。
観察のポイント:
– ドレーン排液の性状・量(鮮血が急増する場合は要注意!)
– バイタルサイン:血圧低下・頻脈(ショックの徴候)
– 創部・腹部膨満・腹痛
– 尿量減少(ショック時は腎灌流↓ → 乏尿)
▶ 縫合不全(吻合部離開)
病態:
手術で縫合した部位(つなぎ目)がうまくくっつかずに離開することを縫合不全といいます。消化液や体液が腹腔内や組織内に漏れ出し、腹膜炎・腹腔内膿瘍の原因になります。
発症時期: 術後3〜7日頃に多い
観察のポイント:
– 発熱(38℃以上の持続)
– ドレーン排液が混濁・悪臭を帯びる
– 腹痛・腹部緊張感(腹膜刺激症状)
– 腸蠕動音の減弱
– 炎症反応の上昇(WBC↑・CRP↑)
⚠️ 要注意: 縫合不全が起きると急速に敗血症に進行するリスクがあります。「なんとなく調子が悪そう」「元気がない」という患者さんの訴えも大切なサインです!
▶ 術後肺炎・無気肺
病態:
術後は呼吸が浅くなりやすいため気道分泌物が貯留しやすくなります。また全身麻酔による繊毛運動の低下・手術後の横隔膜運動制限も影響します。分泌物が貯留した部位では換気ができなくなり無気肺となり、そこに細菌が繁殖すると肺炎になります。
観察のポイント:
– 呼吸数・SpO2の低下
– 発熱
– 痰の量・性状(膿性痰は感染のサイン)
– 呼吸音の変化(副雑音・呼吸音減弱)
看護ケア:
– 定期的な体位変換(無気肺になりやすい部位の換気を促す)
– 深呼吸・咳嗽の促し(術前に練習した成果が活きる!)
– 早期離床(座位・立位で横隔膜が下がり換気量が増える)
▶ 深部静脈血栓症(DVT)・肺血栓塞栓症(PTE)
病態(Virchow の三徴):
血栓ができやすい状態は以下の3つが重なるときと言われています:
- 血流のうっ滞(長時間の不動・手術体位による圧迫)
- 血管壁の損傷(手術操作・カテーテル留置)
- 血液凝固能の亢進(手術侵襲・脱水)
観察のポイント:
– 下肢の疼痛・腫脹・熱感・発赤(DVTのサイン)
– 突然の呼吸困難・胸痛・SpO2低下(PTE発症のサイン!緊急対応が必要)
– Homans徴候(足関節を背屈させると腓腹部に疼痛→陽性でDVTを疑う)
予防ケア:
– 弾性ストッキング・フットポンプの使用
– 早期離床の促し
– 水分補給(脱水は血液濃縮を招く)
– 抗凝固療法(ヘパリンなど)の与薬と効果確認
③ 術後のバイタルサイン・観察の頻度
術後は時間経過によってリスクが変化します。おおまかな観察の目安を覚えておきましょう。
| 時期 | 観察頻度の目安 | 主なリスク |
|---|---|---|
| 術直後〜術後2時間 | 15分ごと | 麻酔覚醒、循環不安定、急性出血 |
| 術後2〜24時間 | 1〜2時間ごと | 出血、呼吸合併症 |
| 術後2〜3日目 | 4時間ごと | 縫合不全、感染 |
| 術後3〜7日目 | 1日2〜4回 | 縫合不全、DVT、肺炎 |
※ 患者状態・施設のプロトコルによって異なります。異常があればすぐに頻度を上げて観察!
④ 疼痛管理:痛みを我慢させないことが大切!
術後疼痛の管理は単なる「痛みを取る」だけではありません。
疼痛が強いと起こること(病態):
– 呼吸が浅くなる → 無気肺・肺炎リスク↑
– 体を動かせない → DVTリスク↑ / 廃用症候群
– ストレス反応が持続 → カテコールアミン放出 → 心臓への負担↑
– 睡眠障害・せん妄のリスク
NRS(数値評価スケール)を使って定期的に痛みを評価し、鎮痛薬を積極的に使用することが回復を早めます。患者さんの中には痛みを伝えることに遠慮してしまう方もいます。言葉だけでなく表情やバイタルサインの変動にも気を付けて早めに対応していきましょう。
⑤ 術後せん妄:見落とさないで!
術後せん妄は高齢患者さんに特に多く見られる精神症状で、見逃されやすい合併症のひとつです。
病態:
手術侵襲・麻酔薬・疼痛・不眠・環境変化・電解質異常などが複合的に作用し、脳の機能が一時的に障害されます。
症状:
– 夜間に突然の興奮・不穏
– 点滴やドレーンを自己抜去しようとする
– 日付・場所の見当識障害
– 昼夜逆転
予防ケア:
– 早期離床・日中の活動促進
– 規則的な睡眠・覚醒サイクルの確保
– 補聴器・眼鏡の使用(感覚遮断を防ぐ)
– なじみのある環境づくり(家族の面会・写真など)
– 疼痛コントロール・水分管理
📝 まとめ:術後看護のポイント
✅ 手術・麻酔後の生体反応を理解した上でアセスメントする
✅ 合併症の「正常な反応」と「異常のサイン」を見分ける
✅ 早期発見・早期介入が患者さんの回復を左右する
✅ 疼痛管理・早期離床を積極的に行い、二次合併症を予防する
👩⚕️ 新人さんへ一言
術後看護はとにかく「観察」が命です。「なんかいつもと違う」という直感を大切に、先輩に相談することを恐れないでください。看護師の観察眼が患者さんの命を守っています。
そして、忘れてはならないのが、「苦痛の緩和」です。疼痛コントロールだけでなく、空調や布団の重さにも気を配りましょう。また、患者さんの精神面を配慮した言葉がけ・心遣いを大切にしてください。患者さんが「安全で安楽に」過ごせるかは、あなたの観察と看護にかかっていると言っても過言ではありません。
病態と看護を結びつけて考えられるようになると、「なぜこのアセスメントをするのか」がわかるようになり、自信を持って動けるようになります。少しずつ積み上げていきましょう!
※ この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、各施設のプロトコルや患者状態によって対応が異なる場合があります。実際の看護実践では担当医師・先輩看護師の指示に従ってください。
📚 看護の勉強に役立つ教材
看護師国家試験や認定試験の対策教材には、アステッキ|医療系資格試験教材という選択肢もあります。過去問から解説まで充実した教材らしいです。自分にあった教材をみつけて、資格合格を目指しましょう!



コメント