この記事では、新人看護師さんや育休復帰時に不安のあるママナースへ向けて、「術前看護」を、病態とセットで解説します。「何をするか」だけじゃなく「なぜするか」を理解すると、医師との会話もスムーズになり、臨床でのアセスメントもしやすくなります。
周手術期ってそもそも何?
「周手術期(しゅうしゅじゅつき)」とは、手術前・手術中・手術後を含めた一連の期間のことです。英語では perioperative period とも言います。
| フェーズ | 期間の目安 | 主な看護の役割 |
|---|---|---|
| 術前期 | 手術決定〜手術室入室まで | アセスメント・患者教育・手術準備 |
| 術中期 | 手術室入室〜退室まで | 安全管理・感染予防・体位管理 |
| 術後期 | 手術室退室〜回復・退院まで | 合併症予防・早期回復支援 |
今回はこのうち 術前期 を深掘りしていきます!
術前看護の目的
術前看護の一番の目的は、「患者さんが手術を安全に受けられる状態に整えること」です。手術・麻酔によって体には大きなストレスがかかります。事前にリスクを把握して備えることが合併症予防につながります。
① 術前アセスメント:何を見る?
術前のアセスメントでは、「この患者さんに手術リスクはないか?」という視点で情報収集します。
▶ 全身状態のアセスメント
| 項目 | なぜ必要か(病態と関連) |
|---|---|
| 年齢・BMI | 高齢・肥満は創傷治癒遅延・肺合併症のリスク上昇 |
| 既往歴(糖尿病・心疾患・呼吸器疾患など) | 血糖コントロール不良では創感染リスク↑、心肺機能低下は麻酔リスク↑ |
| 内服薬の確認 | 抗凝固薬・抗血小板薬は術中出血リスク↑のため休薬確認が必須 |
| 喫煙歴 | 喫煙は気道分泌物を増加させ、術後肺炎・無気肺のリスク↑ |
| 栄養状態(アルブミン値など) | 低栄養は免疫機能低下・創傷治癒遅延の原因に |
| 感染徴候(発熱・炎症反応) | 術前感染は術後合併症の重大リスク因子 |
💡 ポイント:糖尿病患者さんの場合
血糖が高い状態では白血球の機能が低下し、細菌への抵抗力が落ちます。また末梢循環障害もあるため、創部への血流が不足して傷が治りにくくなります。術前から血糖コントロール目的で入院することもあるのはこのためです。
② 術前の患者教育:なぜ事前説明が大切なの?
術前に患者さんにしっかり説明することは、術後合併症の予防に直結します!
深呼吸・咳嗽練習(呼吸訓練)
なぜ必要か(病態):
全身麻酔中は人工呼吸器で管理されるため、自発呼吸が抑制されます。術後は麻酔薬の影響・創痛・横隔膜の機能低下などから呼吸が浅くなりやすく、無気肺や肺炎が起きやすい状態になります。
術前から深呼吸や huffing(ハフィング:強制呼気)の練習をしておくことで、術後に自分でできる気道クリアランスの方法を身につけてもらいます。
早期離床の説明
なぜ必要か(病態):
手術後のベッド安静状態では下肢の筋肉ポンプ作用が低下し、血流がうっ滞します。これにより深部静脈血栓症(DVT)が形成され、血栓が剥がれて肺動脈を詰まらせると肺血栓塞栓症(PTE)という命にかかわる合併症になります。
術前から「なぜ早く起きることが大切か」を説明しておくと、術後の離床への協力が得やすくなります。
禁煙指導
なぜ必要か(病態):
タバコに含まれる一酸化炭素はヘモグロビンと強く結合し(カルボキシヘモグロビン形成)、酸素運搬能を一時的に低下させます。ただし一酸化炭素の影響そのものは比較的早く解消される可能性があり、禁煙後おおむね12〜24時間程度で改善傾向がみられることが多いとされています(個人差や喫煙量によって異なります)。
一方、気道への影響はより長期にわたります。喫煙は気道分泌物を増加させ、繊毛運動を障害するため、術後に痰が出しにくくなり無気肺・肺炎リスクが高まります。こちらの回復には数週間以上かかるとされており、術前最低2週間の禁煙が推奨されています。
💡 補足:「禁煙してすぐに手術受けても意味ないの?」と患者さんに聞かれることがあります。一酸化炭素の影響は短期でも改善しますが、気道や免疫機能の回復には時間が必要なため、「早く始めるほどよい」という説明が正確です。
術後の痛みは遠慮なく伝えてほしいと伝える
なぜ必要か(病態):
術後疼痛が強いと、患者さんは呼吸を浅くしてしまいます。これが無気肺・肺炎のリスクを高め、また痛みで動けないことがDVTにもつながります。さらに疼痛によるストレス反応が続くと、心臓への負担や睡眠障害・せん妄リスクも上昇します。痛みを我慢することは、回復を妨げる原因になるのです。
にもかかわらず、多くの患者さんは「痛いのは当たり前」「看護師さんに迷惑をかけたくない」と思って我慢してしまいます。だからこそ、術前に看護師から積極的に「痛みは遠慮なく言ってください」と伝えることが大切です。
💬 患者さんへの声かけ例:
「術後は痛みを感じたら、どんなに小さな痛みでも遠慮なく教えてください。痛みを我慢すると、深呼吸できなくなったり、動けなくなって回復が遅れることがあります。私たちはむしろ教えてほしいんです。鎮痛薬はちゃんと準備していますので、安心してください。」
③ 術前の直接準備(手術前日〜当日)
| 準備内容 | 目的・病態との関連 |
|---|---|
| 絶飲食の確認 | 胃内容物による誤嚥性肺炎(麻酔導入時に嘔吐→誤嚥のリスク)を防ぐ |
| 術前投薬の確認・与薬 | 不安軽減薬、予防的抗菌薬など |
| 弾性ストッキング装着 | DVT予防(下肢静脈の外圧迫により血液うっ滞を防ぐ) |
| 膀胱留置カテーテル挿入 | 術中の尿量管理・尿閉予防 |
| 臍・陰毛の処理(必要時) | SSI(手術部位感染)予防 |
| 同意書・持参物の確認 | 安全な手術施行のための書類管理 |
| バイタルサイン測定 | 術前基準値の確認・手術可否の判断 |
📝 まとめ:術前看護のポイント
✅ 手術リスクを早期に把握し、チームで共有する
✅ 術後合併症の予防は術前から始まっている(呼吸練習・禁煙・DVT予防教育)
✅ 患者さんが「なぜこの処置が必要か」を理解できるよう説明する
👩⚕️ 新人さんへ一言
術前看護は「手術が始まる前の準備」というイメージがありますが、実は術後合併症を予防するための最初の一手でもあります。患者さんが手術室に入る前に、どれだけ丁寧にアセスメントと教育ができるかが、術後の回復を大きく左右します。
「なぜこのアセスメントをするのか」を病態と結びつけて考えられると、見るべきポイントが自然とわかるようになります。少しずつ積み上げていきましょう!
※ この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、各施設のプロトコルや患者状態によって対応が異なる場合があります。実際の看護実践では担当医師・先輩看護師の指示に従ってください。
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