「人工呼吸器って設定がたくさんあって難しそう…」と感じているナースさん、多いですよね。でも基本の仕組みが分かれば理解しやすいです。理解があれば急変のサインに気づくスピードがぐっと上がります。この記事では、人工呼吸器の基本的な構造・モード・主な設定値についてやさしく解説します。
人工呼吸器の基本的な構造
- 本体(ベンチレーター):換気を制御するコンピューター部分
- 回路(ブリージングサーキット):患者さんと機械をつなぐ蛇管
- 加温加湿器:送気する空気を温めて湿らせる装置(気道乾燥を防ぐ)
- 気管チューブ(ETチューブ):気道に挿入する管
まず知っておきたい「換気の種類」
人工呼吸器のモードを理解するには、まず「強制換気」と「補助換気」の違いを押さえることが大切です。
🔴 強制換気(Mandatory Ventilation)とは?
機械が「設定した回数・換気量を、患者さんの呼吸状態に関係なく強制的にすべて届ける」換気のことです。
たとえば RR(換気回数)を16回/分、TV(一回換気量)を500mLに設定したとします。
このとき機械は、患者さんが自分で息をしようとしていても、していなくても、必ず1分間に16回、500mLの空気を送り込みます。
つまり患者さんの呼吸仕事量(呼吸に使うエネルギー)をゼロに近づけることができるのが強制換気の特徴です。筋弛緩薬を使っている患者さんや、自発呼吸がない・弱い患者さんに適しています。
🟡 補助換気(Assisted Ventilation)とは?
患者さんが自分で息を吸おうとする動き(トリガー)を感知して、そのタイミングに合わせてサポートする換気です。
患者さんが自発呼吸をしなければ機械は動きません。自発呼吸があることが前提です。
よく使われる換気モードを理解しよう
① CMV / A/C(調節換気・補助調節換気)
「完全に機械まかせ」の強制換気モードです。
設定した回数・換気量(または圧)をすべて機械が保証します。
CMVとA/Cの違いは患者さんの自発呼吸に同期するかどうかです。CMVは自発呼吸を無視して設定どおりに換気する(筋弛緩使用中など)、A/Cは患者さんのトリガーを感知したらそのタイミングで設定量を届けます。つまり「引き金は患者さんが引いても、弾は機械が用意する」のがA/Cです。
⚠️ 注意点(A/C):患者さんが頻回に自発呼吸をすると、そのたびに設定量が入るため過換気(CO₂が下がりすぎる)になることがあります。
そしてCMV・A/Cともに、量規定と圧規定の2種類があります。どちらを使うかは疾患・患者さんの状態・施設の方針によって異なります。
🔵 量規定換気(VCV:Volume-Controlled Ventilation)
「届ける量(一回換気量)を固定する」タイプです。CMVならVC-CMV、A/CならVC-A/Cと呼ばれます。
設定したTVを必ず届けることが保証されます。そのかわり、肺の硬さ(コンプライアンス)によって気道内圧(Ppeak)が変動します。肺が硬くなるほど圧が上がるため、Ppeakの上昇監視が重要です。換気量が保証されるのでCO₂管理がしやすいのが利点です。
| 設定項目 | 一般的な設定値(成人目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 換気回数(RR) | 12〜16回/分 | PaCO₂を見ながら調整 |
| 一回換気量(TV) | 予測体重×6〜8 mL (例:50kgなら300〜400mL) | 肺保護換気が基本。実測体重でなく予測体重で計算 |
| FiO₂ | 0.4〜0.6から開始 | SpO₂ 94〜98%を目標に |
| PEEP | 5〜8 cmH₂O | 無気肺予防。ARDS(※急性呼吸窮迫症候群)では高めに設定することも |
| 吸気時間(Ti) | 0.8〜1.2秒(I:E=1:2) | 吸気流速(フロー)も設定する機種あり |
| 監視ポイント | Ppeak < 35 cmH₂O が目安 | 上昇したら痰・チューブ閉塞・気胸を疑う |
🟠 圧規定換気(PCV:Pressure-Controlled Ventilation)
「届ける圧を固定する」タイプです。CMVならPC-CMV、A/CならPC-A/Cと呼ばれます。
設定した吸気圧(PC)に達するまで空気を送り込み、そこで止めます。そのかわり一回換気量(TV)は肺の状態によって変動します。肺が硬くなるとTVが減るため、TVのモニタリングが非常に重要です。圧を一定に保てるため気道への負担が少なく、ARDS※など肺保護が重要なケースで選ばれることがあります。
| 設定項目 | 一般的な値(成人目安) | ポイント |
|---|---|---|
| 換気回数(RR) | 12〜16回/分 | VCVと同様 |
| 吸気圧(PC) | PEEP上に10〜20 cmH₂O追加 (例:PEEP 5+PC 15=最高圧20 cmH₂O) | TVが6〜8 mL/kgになるよう圧を調整する |
| 吸気時間(Ti) | 0.8〜1.2秒(I:E=1:2) | 圧波形が台形になるのが特徴(VCVは三角形) |
| FiO₂ | 0.4〜0.6から開始 | VCVと同様 |
| PEEP | 5〜8 cmH₂O | VCVと同様 |
| 監視ポイント | TVの変動に注意 | TVが下がったら肺の悪化・分泌物貯留のサイン |
📊 量規定 vs 圧規定 どう違う?
| 量規定(VCV) | 圧規定(PCV) | |
|---|---|---|
| 適用モード | VC-CMV、VC-A/C | PC-CMV、PC-A/C |
| 固定されるもの | 一回換気量(TV) | 吸気圧(PC) |
| 変動するもの | 気道内圧(Ppeak) | 一回換気量(TV) |
| モニタリング重点 | Ppeakの上昇 | TVの低下 |
| 特徴 | 換気量が保証される。CO₂管理しやすい | 圧が一定で肺保護に優れる |
| 注意点 | 肺が硬くなると圧が上がりすぎる | 肺の状態変化でTVが変わる |
② SIMV(同期的間欠的強制換気)
「強制換気と自発呼吸を組み合わせる」モードです。
設定したRRの回数だけ強制換気を行い、それ以外のタイミングで患者さんが自発呼吸をした場合は自分の力で呼吸(または圧サポートを加えて補助)します。
たとえばSIMV回数を8回/分に設定した場合、機械は1分間に8回の強制換気を行います。患者さんが自発的に追加で呼吸をしても、機械はそれに対して設定量を送ることはしません(PSを追加すれば圧サポートはされます)。
ウィーニング(人工呼吸器を外していく過程)によく使われますが、自発呼吸の仕事量が増えて患者さんが疲弊しやすいという面もあり、近年はPSVを使うことが多くなっています。
| 設定項目 | 一般的な値(成人目安) | ポイント |
|---|---|---|
| SIMV回数(RR) | 8〜12回/分(ウィーニング中は徐々に減らす) | 自発呼吸の割合を増やしていく |
| TV(強制換気分) | 体重×6〜8 mL | A/Cと同様 |
| PS(圧サポート) | 5〜10 cmH₂O(自発呼吸への上乗せ) | 自発呼吸の負担を軽減 |
| PEEP | 5〜8 cmH₂O | A/Cと同様 |
③ PSV(圧支持換気)
「患者さんの自発呼吸をプレッシャーでサポートする」補助換気モードです。
患者さんが息を吸おうとする動き(トリガー)を感知したとき、設定した圧(PSレベル)で空気を押し込んでサポートします。自発呼吸がなければ機械は動きません。バックアップ換気(アポネア換気)が設定されていることが多く、一定時間自発呼吸がなければ自動的に強制換気に切り替わります。
一回換気量は患者さんの自発呼吸の強さ+PS設定によって変わり、機械が固定の量を届けるわけではありません。そのため、TVのモニタリングが大切です。
| 設定項目 | 一般的な値(成人目安) | ポイント |
|---|---|---|
| PS(圧サポート) | 5〜20 cmH₂O(ウィーニング中は徐々に下げる) | 5 cmH₂O以下になれば抜管を検討することも |
| PEEP | 5〜8 cmH₂O | PSと合わせて管理 |
| FiO₂ | 0.4〜0.6 | SpO₂目標は同様 |
| アポネア時間 | 15〜20秒が多い | この時間自発呼吸がなければ強制換気へ |
④ CPAP(持続的陽圧換気)
「機械は換気せず、一定の陽圧をかけ続けるだけ」のモードです。
呼吸のサポート(息を押し込む)はせず、ただ気道内に一定の圧力(PEEP相当)をかけ続けることで、気道や肺胞が虚脱するのを防ぎます。自発呼吸が十分にある患者さんが対象で、抜管直前の評価や、ウィーニングの最終段階に使われることがあります。
| 設定項目 | 一般的な値 | ポイント |
|---|---|---|
| CPAP圧 | 5〜8 cmH₂O | PEEPと同じ概念 |
| FiO₂ | 0.3〜0.4 | 自発呼吸で十分換気できているか確認 |
モードの違いをひとことで整理すると
| モード | 強制換気 | 自発呼吸 | こんなときに使う |
|---|---|---|---|
| CMV / A/C | ○(全部) | △(感知するが量は機械が決める) | 意識なし・筋弛緩使用・急性期 |
| SIMV | ○(設定回数分) | ○(残りは自発) | ウィーニング開始期 |
| PSV | × | ○(すべて自発+圧サポート) | ウィーニング中期〜後期 |
| CPAP | × | ○(サポートなし) | 抜管直前・ウィーニング最終段階 |
覚えておきたい主な設定項目
- 換気回数(RR):1分間に何回息を送るか。成人は通常12〜16回/分が目安
- 一回換気量(TV):一回の呼吸で送る空気の量。体重1kgあたり6〜8mLが目安(肺保護換気)
- FiO₂(吸入酸素濃度):0.21〜1.0の間で設定。SpO₂ 94〜98%を見ながら調整(高すぎると酸素毒性のリスク)
- PEEP(呼気終末陽圧):息を吐いた後も気道内に陽圧を維持。通常5cmH₂O程度から。無気肺・肺胞虚脱の予防に重要
- 最高気道内圧(Ppeak):急上昇は分泌物貯留・気管チューブの閉塞・気胸のサイン
- PS(圧サポート):自発呼吸に上乗せする圧。PSVやSIMVで使用
※ ARDS(急性呼吸窮迫症候群:Acute Respiratory Distress Syndrome)とは、肺炎・敗血症・外傷などをきっかけに両肺に炎症が起き、酸素化が著しく低下する重篤な状態です。人工呼吸器管理が必要になることが多く、ICUでよく見られる疾患のひとつです。
まとめ
- 強制換気は機械がすべての回数・換気量を保証する。患者さんの状態に関係なく届ける
- 補助換気は患者さんの自発呼吸をサポートする。自発呼吸がなければ動かない
- A/Cは急性期、SIMVとPSVはウィーニング、CPAPは抜管直前というイメージで覚えよう
- 設定値は患者さんの体重・SpO₂・血液ガスデータを見ながら医師が調整する
- ナースとしては「今どのモードで何が設定されているか」を把握してアラームや患者さんの変化に気づくことが大切!
次の記事では、アラーム対応と観察ポイントについて解説します😊
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