「人工呼吸器」という言葉、看護学校で習ったけど実際にどんなものか、なんとなくしかわからない…そんなナースさんも多いのではないでしょうか。
このシリーズでは、人工呼吸器装着中の患者さんの看護について、病態とセットでやさしく解説していきます。まずは「そもそも人工呼吸ってなに?」というところから一緒に学んでいきましょう!
呼吸とはどんな仕組みで行われている?
私たちが普段なにげなくしている「呼吸」。実はとても精密なメカニズムで行われています。呼吸の目的はシンプルで、酸素(O₂)を体の中に取り込み、二酸化炭素(CO₂)を体の外に出すことです。この2つをするために、私たちは1分間に12〜20回もの呼吸を無意識に繰り返しています。
呼吸を支える「3つの要素」
- 換気(ベンチレーション):口や鼻から取り込んだ空気を肺の中に入れたり逆に排出する動き
- 拡散(ディフュージョン):肺胞でO₂とCO₂がガス交換される過程
- 循環(パーフュージョン):血液がガスを運ぶ過程
この中で人工呼吸器が主に助けているのは「換気」の部分です。
「自発呼吸」と「人工呼吸」の違い
自発呼吸は、脳の呼吸中枢からの指令 → 横隔膜・肋間筋が動く → 胸腔が広がる → 肺に空気が入る、というサイクルで行われます。このどこかが障害されると、自分では十分に呼吸できなくなります。
人工呼吸が必要になる主な理由
「なんらかの理由」と一言で言っても、実際には病態はさまざまです。以下のような状態のときに人工呼吸管理が検討されます。
- 呼吸不全(低酸素・CO₂貯留):肺炎・ARDS・喘息重積発作など、肺自体のガス交換が障害された状態。SpO₂が上がらない・CO₂が抜けないケース
- 意識障害・気道保護ができない:脳卒中・薬物中毒・心肺停止後など、意識レベルが低下して自分で気道を守れない状態
- 呼吸筋の疲労・麻痺:ギランバレー症候群・重症筋無力症・頸髄損傷など、呼吸に使う筋肉そのものが動かせない状態
- 術後管理:全身麻酔後に自発呼吸が戻るまでの間、または大手術後に呼吸仕事量を減らして回復を助けるため
- ショック・循環不全:敗血症性ショックなど、全身状態が悪く呼吸に使うエネルギーを温存する必要があるとき
これらを大きく分けると「肺・気道の問題」「脳・神経の問題」「全身状態の問題」の3パターンになります。患者さんの背景を見るときに意識してみてください。
人工呼吸の種類:NIV(非侵襲的)と侵襲的換気
① 非侵襲的換気(NIV・NPPV)
気管挿管をせずにマスクを顔に当てて陽圧換気を行う方法です。患者さんへの侵襲が少なく、意識のある患者さんにも使えます。代表的な換気モードとしてCPAPとBiPAPがあります。
CPAP(シーパップ)とは?
CPAPは Continuous Positive Airway Pressure(持続陽圧気道圧) の略で、NPPVの換気モードのひとつです。呼吸の吸気・呼気にかかわらず、常に一定の陽圧をかけ続ける のが特徴です。
肺胞がしぼみやすい状態(無気肺・肺水腫・睡眠時無呼吸など)で特に効果的で、つぶれかけた肺胞を膨らませたまま維持することができます。自分で呼吸できる力は必要なので、自発呼吸がある患者さんに使います。
主な適応:睡眠時無呼吸症候群(在宅でも使われる)・肺水腫・術後の酸素化改善・軽度〜中等度の呼吸不全
BiPAP(バイパップ)とは?
BiPAPは Bilevel Positive Airway Pressure(二相性陽圧換気) の略で、こちらもNPPVの換気モードのひとつです。CPAPと大きく違うのは、吸気時(IPAP)と呼気時(EPAP)で圧を変える 点です。
- IPAP(吸気陽圧):息を吸うときに高い圧をかけて換気をサポートする
- EPAP(呼気陽圧):息を吐くときも低い圧をかけて肺胞がつぶれないようにする
CPAPが「圧を一定に保つだけ」なのに対し、BiPAPは吸気を積極的に助けてくれるイメージです。そのため、CO₂が溜まりやすい(換気不全型)の患者さんにも有効です。COPD急性増悪・慢性呼吸不全の急性期などでよく使われます。
主な適応:COPD急性増悪・慢性呼吸不全・心原性肺水腫・神経筋疾患による換気不全
CPAPとBiPAPの違いをひとことで
🔵 CPAP =「肺胞を開いて保つ」→ 酸素化の改善が目的
🟠 BiPAP =「吸気を手伝いながら肺胞も保つ」→ 換気補助+酸素化が目的
病棟やICUで「NPPVつけてます」と申し送りを聞いたとき、それがCPAPかBiPAPかで患者さんの状態のイメージが変わってきます。ぜひ意識してみてください。
② 侵襲的換気(気管挿管 + 人工呼吸器)
気管に管(気管チューブ)を挿入し、人工呼吸器を接続して換気を行う方法です。確実な気道確保ができ、換気量や酸素濃度を細かくコントロールできますが、患者さんへの侵襲は大きくなります。NIVで対応できない重症例や、意識のない患者さんに適応になります。こちらのモードについては次の章で解説します。
人工呼吸器は「陽圧換気」で肺を広げる
自発呼吸は「陰圧換気」といって、胸を広げることで肺の中が陰圧になり、空気が自然と吸い込まれる仕組みです。一方、人工呼吸器は「陽圧換気」といって、機械側から圧をかけて空気を肺に送り込みます。これが自発呼吸と大きく違う点で、合併症とも深く関係してきます(詳しくは④合併症の記事で解説します)。
まとめ
- 呼吸は「換気・拡散・循環」の3要素で成り立ち、人工呼吸器は主に換気を助ける
- 人工呼吸が必要になる主な理由は「呼吸不全・意識障害・呼吸筋麻痺・術後・ショック」
- CPAPは常に一定の圧をかけて肺胞を開いた状態に保つ(酸素化目的)
- BiPAPは吸気と呼気で圧を変えて換気を積極的にサポートする(換気補助+酸素化目的)
- 人工呼吸器は「陽圧換気」で肺に空気を送り込む——自発呼吸の陰圧換気と逆の仕組み
次回②では、人工呼吸器の具体的な設定値(VT・RR・FiO₂・PEEPなど)の意味をやさしく解説します。お楽しみに!
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